タタキの肉が運ばれてきて、赤く綺麗な物を焼いて茶色くしてしまうことが勿体無いなと感じながら網を見つめていた子どもの頃、を、思い出した。たまに過ぎる黒い川がある。日が沈んでから前を通るので黒いのであるが、幅広く流れもごうごうと速く、さらに低めの位置にある欄干が、うっかり落ちちゃう想像を促して恐しい。何かと似ているなあ、常々思っていた正体は「モルダウ」(スメタナ作の楽曲)だった。小中の学校どちらかで習い、祖国への愛が込められた美しい曲、といった解説があったのだが、CDを聴いたら短調の主題は激しくて哀しいのだった。黒い流れはそれと似て、最初は面食らうが段々に魅力的だ。