うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

黒い水

美しく赤き肉 タタキの肉が運ばれてきて、赤く綺麗な物を焼いて茶色くしてしまうことが勿体無いなと感じながら網を見つめていた子どもの頃、を、思い出した。たまに過ぎる黒い川がある。日が沈んでから前を通るので黒いのであるが、幅広く流れもごうごうと速…

早退

近頃よく道を尋ねられる。大体ちょっとした買い物や運動のためとかの丸腰で居る時だ。せめて携帯を持ち歩いている時にしてくれ!と、歯ぎしりするのだが、手ぶらで気ままに歩いているからこそ、近くに長年住んでいるかのように見られるのかも、と、さっき気付…

人魚の靴

ベランダが間取りの半分を占める静かな部屋に住む。そうしたら簡単なテーブルと椅子と卓上コンロを置いて、食事をしたりコーヒーを飲んだり煮たり切ったりは全てそこでしよう。部屋の中だと虫の棲息が恐い植木鉢なども置こう。こんな天気の良い日は出掛けな…

星と翼

お風呂場に古典単語本が置いてあった。テストまでにこれだけ覚えときましょ、というやつだ。家に来た誰かが置いていったのだろう。風呂場でじぶんも借り物じゃない冊子などは読むが、集中できるものののぼせて長くは続かない。もしやその時間限定度が暗記に…

あさって

やろうと思えばすぐできるのにやったことないこと、の一つにカウチポテトがある。ソファとテレビが無いのでベッドとパソコンで代用するにして、問題は歩いて行けるビデオ屋の位置がわからないことだ。マップ機能もあるけどうつむきながら路上でぐるぐる回る…

春眠

暁を覚えず。夏は動くとトケるし、秋は寝てるうちに終わる。冬は布団から出られない。季節はたまに言い訳に使える。

罌粟の花

むかしっからありそうな文房具屋さんに入る。蛍光灯の下、ガラス越しには店主の顔が気難しく見えたが、笑顔で迎えてくれた。「練り消ゴムありますか。」「‥あるよ!あるけどおもちゃのじゃないよ!」と、下のストッカーから取り出して見せる。あるだけ求めると…

慌てない

ヴァルキリー 少しの外傷なら対処の仕方がわかって慌てなくなってきた。 左瞼がピコピコして、ものもらいができた。抗菌目薬はまあまあ高い。でも悪化してお医者にかかるのに比べれば、と、スポイトに小分けされてそのつど使いきれるものを買って早速点眼し…

ちょこ

今までに一番美味しいチョコの思い出はアヴィニョンで食べたチョコレートアイスです。カステラにサンドされていました。黒い肌の女性が、茶色くてしっとりしたフワフワの円盤を皿に載せて運んで来ます。そうして「ボナペティ」と、にっこり。(可愛い!!)お店…

怪異

生姜をおろそうと思ったらおろし金がなかった。買ってなくていざというときに不便だったのを、すこし前に譲り受けて、大事に持って帰って来た筈なのに。手に取った記憶があるのに、それが金属だったのかプラスチックだったのか思い出せない。と、いうことは…

花は盛りに

咲く前は待ち遠しいのにいざ咲くと、もうすぐ枯れるのかと不安になる。外気と日に当てるためにベランダに出しておいたヒヤシンスをおそるおそる中に入れて見ると、肉厚の葉っぱの陰から、また新たなつぼみが顔を出しておる。先陣きって咲いていたものもまだ…

都営線の写真展

都営交通の写真展「すべての今日のために」を観にゆく。地下鉄の深さに驚く。この階段は△△△段あります、と、昇降口に注意書きのあるにもかかわらず階段をえらんだことを、途中で後悔する。すぐ横の壁面に作品パネルが並んでおり、子細に見たい場合を除くと、…

つい書き写す

そんなに手塩にかけていないヒヤシンスがみごとに開花した。水の中で根を伸ばすのも早かったが、発芽してからはぐんぐん育ち、さっきと今と状態がちがう、と、見えるほどだ。鈴なりに順番で咲いてゆく花々は青春期の少女が美しさをきそっているようで、支え…

セレナーデ

白地に苺の柄が入った部屋着が暖かいのだが、寝起きなど赤色が血に見えていつも一旦びっくりする。怪我か鼻血かと目を凝らすと苺なので安心する。味のない氷に甘さで刺激を加える夏のシロップのようなパジャマです。

ステロイド

最寄りの図書館にある、電子レンジのような箱。どうやら書籍を1ページずつ消毒する機械のようだ。打ち寄せる近代化の波に乗りたいものです。作動時の音や光り方、本がどんな状態であれよあれよと消毒されるのか、立ったり浮かんだりするのかも気になるところ…

ヒッチコック

からすが喋っている気がします。こっちでかあかあ言うかと思うとあちらでアーアー。次はすこし離れた場所からまた違った声が。ごみ沢山出してあるけど、網でガードされてて袋やぶれないわ。そっちはどう?こっちもですわ。隣のブロック行ってみます??とか相談…

ぼくたちの失敗

りんごの蜜が香り高いタルト・タタン、染み染みなシロップが口の中を幸せで浸すサヴァランは、つくり手の「うっかり」によって生み出された洋菓子だそうな。 失敗はときに思いがけぬ発見をもたらします。画像は短編「離さない」(「神様」中公文庫 所収 )の…

ナイツ

お話聞かせて 王子や王女を、王子や王女より美しく描くのは簡単ですが、猫や星空を、猫や星空より美しく描くのは簡単ではない。

セロリ

焼き方に工夫 月夜にはやっぱり卵焼きです。薄皮が主流のこのお家では二個の卵で三猫ぶん。黒猫は塩っからいのが好き、しま猫は甘いのが好き、三毛猫は味の無いのが良くって、卵焼きというのはウインナと一緒に食べるもんだと思っています。

上着はハンガーに

よく通る銀杏並木。冬の夜間はイルミネーションが輝いてとても綺麗なのですが、紐状の金属が、葉まで数枚巻き込んでしまっています。黄色みは失われ青白くさえなっているのに、電飾に固定されながらまだ枯れ落ちないでいる葉っぱ。『最後のひと葉』(O・ヘ…

推敲

「ダブダブした白いズボンや、割にぴっちりしているけど格好良いだけで風を通しまくるベストとかが流行るのは、けっきょくインドみたいに暑くなって、インドの人みたいにスリムが増えたからだと思うのだ。」ふうん、と頷きながら土手を歩くと地震が起きたが…