こむら返り になったことがあります。
はげしいふくらはぎの痛みが寝込みを襲う現象です。
土踏まずがつり、足の薬指と中指が離れなくなる軽いものとは
遥かに段階の違うそれは、「痛み」と認識することが瞬時にできない程。
小さい頃に隣で寝ていた姉がきゅうに叫びだした夜の光景や、
こむら返り、という表現を思い返した時、
やっと「痛い」と口に出すことができました。
隣に誰か居ようと居なくとも叫び続けるのは、
助けを求めているのでなく、混乱のためでもなく、
声を発することで少しでも気を紛らわそうという儚い試み。
壁に足の裏を押しつけて人間つっぱり棒となり、
なんとか治めた後も、再びなるのでないかと怯えながら夜を越しました。
なのになぜかどこかで、こむら返りの夜を懐かしく思っています。
ジェットコースターやお化け屋敷など「予測できる恐怖」が苦手な
じぶんにとっては、突然やってくるスリルを味わう機会なのかもしれません。