うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

はじめの四年間

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水を得たように漁るマヨ・児童文学の棚  編も、三シリーズ目となり、『大きな森の小さな家』の続編・『はじめの四年間』を読み終えました。西部開拓時代を生きるインガルス家の次女、ローラが成長して結婚し、夫と二人で農業を営みつつ暮らす日々の章です。あっという間の四年…といってそれは蜜月にうっとりぼんやりのため、ではなく、嵐や病気、熱風、ひょう、借金や税金に追われ、息つく暇もないのです。あまりにも多くの現実が凝縮されつつ淡々と、明確に書かれていますが、冒頭の馬車のシーンには流行歌が大きく引用もされていて夢のようです。二人がはじめて新居に向かうときなのか、その後、落ち着いた星夜にドライブに繰り出したときのシーンなのかわかりませんが、湖畔に咲き乱れるバラの甘い香りがにおってきそう。この瞬間があるのなら、待ち受けるどんな過酷な描写にも、読み手として絶望しないことができるシーンです。きれいな野生のバラがたくさん棲息する場所はちかくにないけれど、好きな木蓮の時期にはちゃんと花を観に行こう。

 

○『はじめの四年間』(ローラ・インガルス・ワイルダー/岩波少年文庫