うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

合挽き肉

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ナツメグ

キューピー3分クッキング、の料理本が、台所の棚にはたくさんあった。お腹を空かせた3人の子らが待つ家に戻った母が冷蔵庫を開け、何やら料理を作って大皿に盛ってテーブルに出すまで本当に3分ぐらいだった。ユリゲラーの影響か、スプーン曲げなども時たま見せてくれて、未だタネがわからず、奥さまは魔女‥と、古いドラマのタイトルをぼんやり浮かべながら食べていた。家にあるものやよく使う材料で、と、アレンジを加えていたためなのか、冊子の写真通りの物が出てきたことは一度も無い。

先日コーヒーを飲みに行って、一杯じゃ物足りなかったので二杯目を注文したら、胃を悪くするよ、そんなにガブガブ飲むなんてアラブの人みたい、と言われて面白かった。3分クッキング本の巻末にあるコラムのページに、トルコで絨毯屋さんに入った体験談があった。彼らはまずお茶を勧めて商談するらしい。甘党の店主は小さなミントティーのグラスに熱い紅茶、入りきらない量の角砂糖を無理やり沈めて陽気に話す。お茶をどんどんおかわりするうち、飽和状態にあったお砂糖がどんどん溶けてゆく。半透明の液体に糖分がゆらゆらしているさまがすぐそこに浮かぶような文章だった。