ライトがお洒落に配置された明るい、良い匂いのする部屋、
心地よいソファの上で、時折かけられるソフトな声と、アメリカンな音楽に
身をゆだねる。
「口が乾きますから。」とチョコレートキャラメルの香りがする保湿液を
塗られる。
小説『五分後の世界』で、唇が荒れきっている女捕虜に、
「リップジェリー」を塗ってやるシーンを思い出す。
しばらくの後、目隠しが外され手鏡を見ると、
黒っぽく欠けていた右奥歯が、まっさらなみたいに、
白くなっているじゃりませんか!
きのう、歯医者に行きました。
さすがに麻酔はチクッとするけれども、その後の施術は全然痛くありません。
きゅいーん、という音も小さくなっているようです。
待合室はカフェみたい、ラックに最新の情報誌が並んでいます。
無機質な蛍光灯とたちこめる薬品の匂いに圧迫感を覚えることもありません。
技術の進歩ってすごいけど、こんなに怖くなくなると、皆こぞって歯医者に
行きたくなってしまい、虫歯のひとが増えるんでないかしら、と心配に。
反対に、こまめに掃除や診察に訪れるようになるから、
歯の健康維持に繋がるのかな。
巨匠レイモン•サビニャック氏の版画が架かっています。
口のまわりをべたべたさせて幸せそうにチョコレートを頬張る男の子、が
モチーフで、悪戯心を感じました。