うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

ほくろを数える

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 用意したときに限って使わないものってたくさんある。
 
 傘なんてその最たる例で、それは途端にひどく邪魔な荷物に思えて、そう重たいわけでも大きくもないのに、手にしているのがけがらわしいみたいな気持ちになって、しまいには町のどこかにうっちゃっておきたくなるのは私だけだろうか。
 
 けれどもその日は少しちがった。
 
 なぜなら、出てくるときにたたみなおすと、とても奇麗にできたからだ。
 
 折りたたみはもちろんのこと、普通の傘でも、ちゃんとたためなかった。なぜみんなあんなに細くスマートな状態にすらっとできるのかいつも疑問だった。誰かに教えてもらったにちがいない。もしかすると小学校の道徳の時間で先生が教えてくれた時間があって、わたしが風疹でやすんでいた時にちょうどかさなっていたのかも。
 
 悔やんでも仕方はなく、手首のスナップを意識しても、ちゃんと一節ごとの方向をあらかじめそろえておいても、
 きゅ っと、水気をしぼるみたいにまわした瞬間、ぱらぱらと音が聞こえそうなぐらいに秩序が乱れ、
 できあがったのは不格好にふくらんでペンギンのような出で立ちである。ペンギンの姿がわるいと言っているわけではない、ペンギンはペンギンだからこそ可愛いのだ。