昼寝をした後悲しくなるのは、一体どうしてなのでしょう。
こたつで眠ってしまっておきると、部屋の照明とこたつの電源が切られていて悲しかったのは寒かったからで、ロシア語の時間に耐えきれなくなって突っ伏して寝ていると先生に起こされて悲しかったのは、起こす際にチョークを投げられたのがあまりに恥ずかしかったためで、そうではなくてわけのわからない不安が目覚めた直後に襲うのです。
中学校の卒業式もそうでした。
式の最中も終わった後も悲しくなくて、ひとしきり友人と騒いでさよならした後家に帰ると、式の緊張が解けたのかそのまま横になりました。
夕方目覚めると、心に穴が空いたようです。
しわしわになったセーラー服のスカートの皺を、もう明日からは着ないのだからどうせ伸ばさなくてもよいのかと気がついて、穴が余計に深くなります。
誰かに口をきいたりしたらとたんに泣いてしまいそうですが、あいにく周囲にはだれもいないため、シーツの上で呆然と、おしよせる空虚さに耐えねばなりません。音声を伴わない涙だけが静かに流れていたように思います。
とまあこんな風になぜ昼寝をした後さみしくなるのか。
それはきっと、ふいに眠ってふいに起きるから、体は起きていても心が起きていないのでしょう。
起きている時のような耐性がないから、世界で活動していると必ず押し寄せる感情の波に対応することができないので、ちょっとしたことがすぐに悲しくなってしまうのです。
居眠りエキスパートともいえる経験者の海坊主はそう考えました。