うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

スケッチ

イメージ 1

 ~前回までのあらすじ~
 小説家志望のプレイボーイ西園寺と、彼に思いを寄せる三人が同居する家で、過去類を見なかった怪奇事件が勃発する・・・・!!!






 くそう!どうして語尾に「である」ばかり使ってしまうんだ!!
 小学生の作文だってもうすこしましだぞ!!


 次は語尾づかいの下手さに対する悩み(これも今まで何千回と頭を煩わせている)
 に狂おしく原稿をかいてはやぶりちぎっては投げしていた西園寺が、背後から忍び寄る存在に気がついたとき、すでに手遅れであった。
 宵の闇をまとったかのように怪しく黒いその影の持つ凶器が、彼の後頭部めがけて容赦なく振り下ろされたのである。



 「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!」

 狭い木造の家屋に、男の絶叫が響き渡った。
 
 あまりにも盲目になりすぎて恋することぐらいしかやることが見つからず、たいてい休日も家にいる女たちはすぐさま彼の書斎に集まり、内側からカギのかかった扉を体当たりでぶちやぶった。

 女は強し。以外にあっさりドアは開いたが、彼女たちの目に映ったのは、愛する男の変わり果てた姿だった。
 ひとりは目を見開いて口を覆い、ひとりは涙を流し、いまひとりは腰から崩れ落ちた。
 が、誰も言葉を発することができなかった程に、むごたらしい光景だったのである。


 机につっぷした彼の縮れた髪の間からどす黒い血が・・・
 ではなく、
 机につっぷして気絶した彼の黒髪の後頭部に、見事な「エックス」のそりこみが大きく入れられていた。白すぎる頭皮がエックス状に覗いた姿は、物憂げな西園寺の魅力とはほど遠く、あまりにも滑稽であった。はっきりいってものすごく格好悪い、と誰もが思い、しかし口にしてはおしまいだという暗黙の了解が、空気をよどませ、藪の中で光る一条の真実をますます見えにくくさせていた。




 (つづく)