昔々そのまた昔、某国の政治家・王眠々は、毎日次々に降りかかってくる仕事をどうにかして完璧にこなしたい、しかし麻雀はやめられない、とさんざん首を捻ったあげく、眠らないことを思いついた。
今まで睡眠に費やしていた時間を他に当てれば、なんと有意義な人生が送れるだろうか。
早速えらい呪術家のもとへゆき、いやそれはまずいんでないの人として、と気の進まぬ彼の前に大金を積んで、一生分の眠気を小さな容器に封印することを承諾させた。
計画どおり手に入れた膨大な自由時間を決して無駄にすることなく、美しい妻と可愛い子どもに恵まれてギャンブルもそこそこに幸せな生涯を、眠々は送ったのでした。
めでたし、しかし、このお話には続きがあるのです。
眠気を封じ込めた入れ物は何らかの経緯で太陽の黄色い暑い国へ渡り、古びて変哲もないがなんかわけあり、な様子で存在していました。
「おや、なんだろう。これは」そこへたまたま目にしたエキゾチックな顔の少年。
「きったないランプだなあ。」手にとって埃をごしごしとこすってとりのぞいたその瞬間、むああ~ん、という音と共に現れたのは巨大な魔人・・・ではありません。
遥か昔に封じ込められた眠々の眠気が、湿度満点のランプ内で増殖し、少年の手をかりて解き放たれたのでした。
「うわ、わ~~」
その後彼がどうなったかはしりません。ねむいねむいパワーをもろに浴びてすぐさま眠りこんだことは確かですが、きっと王子様になった夢でも見たのでしょう。
瞬く間に世界中に広がった眠気たちは大気圏に侵入し、空気中を粒子となって舞いながら歴史を飛び越え、なお今日でも、起きている人々の頭や脳に入り込んでは悩みのタネとなっているのです。