かねこみつはる、という著者のお名前は何度も耳にしたことがあったものの、
作品をよんだのは初めて。
中山可穂さんの「熱帯感傷紀行(アジア•センチメンタル•ロード)」の中で、
失恋した著者がアジア旅行にただひとつ持っていったというエッセイだそうです。
(本文中に出てきます。)
なにより、文章が美しいという噂をもとに読み始めましたが、なるほど本当に美しい。
爪哇、とか、
なんて読むかわからない字はズバズバ漢字で表記されているのに、
うつくしい、といった漢字で読むことのほうが多いような言葉は平仮名でかかれています。
文章と文字が織りなす世界に一歩ふみこんでしまえば最後、
紀行文ということを忘れ、異国の言葉で描かれた詩を読んでいるような気分。
きもちよく流されているうちに、内容を理解するのを忘れてしまい、あわてて読みかえす始末。
けれどそれでもよいのです。
南国の暑くて甘い空気がにおってきそうな一冊。濃くて黄色い表紙がめじるしです。
◯「マレー蘭印気候」/金子光晴(中公文庫 2004年)
参考
◯「熱帯感傷紀行」/中山可穂(角川文庫 2002年)
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