久しぶりに仲良しメンバーで旅行へ行こうという話になり、やってきたのは伊勢志摩。
顔をあわせたのはそれこそ10年ぶり。
それぞれの歳月を経てそれぞれの職についていた彼ら。顔ぶれは、歌人、ぬすっと、野球選手、霊媒師と まさにさまざまです。
最初はぎこちなかったけれど水族館を歩いたりおいしいお酒と刺身をたべたりしているうちに
昔のノリを取り戻し、
ほろ酔い気分で部屋へ戻った途端、お約束の枕投げをしようということになりました。
「ちょっとまてよ。なんで枕投げなんだろう。枕は投げるものじゃないのに、どうしてこうも枕投げといった遊びはメジャーなんだろう。」
ぬすっとが突然言いました。
みんなはううむ、そういえば、と首をかしげます。
一番先に答えをだしたのは野球選手。
「きっとあれだよ。ピッチャーが、ボールより重いもので腕を鍛えてやろうと、枕でキャッチボールを始めたのがきっかけさ。」
霊媒師が反論します。
「いやいや、今思い出したのだが、二年ほど前に悪霊が出るという屋敷によばれたんだ。そのとき真夜中にポルターガイストが起こり、広間中を枕が飛び交っていたんだよ。きっと枕には霊がとりつきやすくて、それを見た先人がお祓いの意味もかねて始めたのがきっかけであろう。」
すると、盗人が鼻息をあらげました。
「みんな何をいってるんだ。夜、みんながねついたころに、盗人が盗みをはたらきに入った家の子どもが起きてしまい、一番先になげつけられるのは何だと思う?まくらにきまってるだろ!これが枕投げの起こりなのだ!!」
そこへ歌人がおごそかに、歌うように口をはさむのです。
「あおによし、たらちねの、などの枕詞を知っているかい?あおによしは奈良に、たらちねのは母につく枕詞さ。きっと、この枕詞という制度に疑問を感じたある歌よみが、
いっさいがっさいの枕詞の使用をやめてしまったこと。それがつまりは枕投げ、という言葉のはじまりなのだよ。」
なにをー、このばかやろう!誰かが手もとにあった枕をつかんで投げると、それは見事歌人に命中しました。
歌人は白い顔をさらに真白にわなわなふるわせながら、今ぶち当たった枕をなげかえすともう大騒ぎ。
無事枕投げ大会が開始され、
夜はふけていったのでした。
おわり
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