うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

#小説

電話が苦手

ねむりひめ 「わるいまほうつかいが、のろいをかけた」、と、うそをつき、 おうひは、くにじゅうのでんわを、 やきはらわせました。 ねむりひめ

ホタルイカの沖漬け

夜釣り 常春の国でも生活していくために仕事はせねばならぬ、 と、赤提灯のお店を開くことにした。 先ずは突き出し作るのに使う食材を確保せねば。

Never let me go

ジャケ買い、ならぬ、タイトル買い、というのをたまにやります。 本屋で何度も背表紙を見かけて、題名の響きが綺麗に思えて、あらすじを確認。 内容には惹かれないのでそのままにしておくが、何度も目にする度にどうにも気になって 買ってしまう、というもの…

すきです明朝体

辺見庸さんの『ハノイ挽歌』という滞在記の一説がモチーフ。 同じ作家さんの短編集『ゆで卵』も愛読書です。 装画と挿絵を、西方久さんという方が手がけています。 文章も絵もあまりに好きで、 思わず西方氏のホームページに実名フルネームで書き込みをして…

Nocturne

夢見が悪すぎて、というか夢から覚められなくてあせっているうちに 早起きしてしまいました。(ハムエッグの夢とは別。) 出かける用事があるのできょうこそは、と 思いつつGペンとインクの感触が楽しくて漫画を描いてしまいした。 もうすぐ、人に頼まれてい…

オンディーヌ

オンディーヌ、という、オペラだかバレエか忘れましたが、 そんな物語があるそうな。 うつくしい半魚人の娘が人間の王子に一目惚れします。 どうしても王子をわすれられない娘は、海の魔女に頼んで人間に変身 させてもらう。 魔女は言います。「もしお前が王…

オミツさん

新幹線とか高速バスに乗る際、 最大ちゃうかってぐらい、あらかじめリクライニングされている率が 多いのです。前の席の乗客のひとに。 コワモテじゃないから舐められてるのかしら… 他の席のひとはそんなことされてないのに…。 次から なまはげ の面でもかぶ…

貝殻をひろう夢

ちょっと潜っただけで、水温がぐっとさがるのだ。 はじめてシュノーケルを体験したとき、この感覚に背筋がぞくっとなった。 けれども、次の瞬間、 エメラルドの海を行き交う魚の色とりどりな美しさに目を奪われる。 小さい頃に一度だけ行った海外の島で、満…

珈琲を売る

学校が終わると、あまりにも退屈なので珈琲を売りに行くことにした。 いきいき教室、なる放課後の活動に参加するのはおっくうだし、小学生ひとりで行けるところなんて かぎられている。 帰路に建つたこやき屋さんの匂いには魅かれるけれども、 一旦かえって…

michikusa

彼女の部屋には 何もなかった。 ただ、大量のバンドエイドと、空の金魚鉢が、 10帖の、一人暮らしにしては広大な部屋に 現代アートみたいに置いてあった。 僕が初めて入った時、 驚いたけれど 他のどんな部屋よりも彼女に合っている気がして 何も尋ねられな…

黒服のキャラバン

展示会とか懇親会とか、バイトとか仕事で 昼夜夕がごった煮みたいになって、ひどい寝不足だった。 今週最後の夜勤明けの日に いろいろあって荷物も多くて、 朝の光はもうどんどん強くなるので 首すじに陽が当たって、 いまにも眠りそうだった。 タクシーで帰…

ターリク

何か文章を書きたいなあ、と思ったら、ペンが無かったので 買いに行くことにした。 コンビニに行く途中、木蓮の花が咲き誇っていたので、はっとして足を止める。 この花はいつも、急に美しい姿をあらわす。 つぼみが小さな顔を覗かせ、あー、春かしら なんて…

シーシャ

「水タバコ」 と頼むと、一瞬はてな、という感じで首をかしげたのち、 「ああ、シーシャのことですね。」と、ターバンを巻いた女性の店員さんは頷いた。 若い世代の前で、カップルのことを「アベック」と言ってしまった時のような、ちょっと いたたまれぬ気…

らんおう

あるとき、世界から牛乳がなくなってしまいました。 王様級の人が、ある時電子レンジでホットミルクをつくろうとした結果(自らいろいろやる のが好きな偉い人だったのです)熱い膜でくちびるを大やけどしたそうな。 慌てふためいた大臣やその他の重要人物た…

窓の外

※あらすじ こうもり男という種族がいる。夕暮れ以降になると自在にこうもりに変身できるが、 人間の姿をしている。彼らは一定の年齢に至るまでに、蝙蝠としていきるか、人として生きるか 決めねばならない。決めた後は、もう変身は不可能である。 その年齢に…

黄色とくろ

※あらすじ こうもり男 という種族がいます。 彼らは人間の姿をしていて、 夕暮れ以降になると自在にこうもりに変身できる。 ここに、洋食屋を営んでいる一人のこうもり男がいる。 これは、彼の半生にまつわるお話。 こ、で、やたら韻をふんでいますが、これ…

西陽をうけていっそう朱いおひれは

~前回までのあらすじ~ 天涯孤独の身から、上京して数年が過ぎたこうもり男。 地味だが明るく適当な若者ライフを送っていたが、実はある決断を迫られている。 彼の属する種族は、ある一定の年齢になるまでに、こうもりとして生きるか、人間として生きるか …

フレッシュアイズ

~前回までのあらすじ~ たまねぎを買い求めに街へ出たこうもり男(現 洋食屋のオーナー) 彼の前に姿を見せた仇敵、猪野川は、彼の目の前でこうもりに変身して空の彼方へすがたを消す。 え?こうもりに変身?なんじゃそりゃあ~?? という疑問符が今ここで…

第二部のはじまり

ひとりの男がいた。 彼は、夕暮れを境に、自在にこうもりになることができた。 うまれつきそうだったが、 それが特殊なことであり、 まわりに存在する大多数は持ち合わせていない能力であることは、物心がついていく過程で わかってきた。 うまく喋れないぐ…

選択

~前回までのあらすじ~ きらしていたタマネギを入手するべく街へ出たこうもり男。(現 洋食屋のマスター) そこへ、ひょんなことから出会った天敵。最愛の妹を捨てた、猪野川。 憎しみの視線を向けつつも、どこか憎みきれない猪野川のたたずまい。 今夜、こ…

こがらし

~前回までのあらすじ~ 洋食屋の店主であるこうもり男は、ランチの材料であるたまねぎを調達すべく、街へ繰り出す。 ひょんなことからサバが食べたくなり、駆け込んだ定食屋で昔の仇敵に遭遇。 勝負を挑むもあっさり断られ、行き場をなくした怒りの矛先やい…

怒り

※前回までのあらすじ ランチの仕込みに必要なたまねぎを調達すべく、街に出たこうもり男。(現職、洋食屋のマスター) 思いがけずたべたくなったサバ缶を求め、すべりこんだ定食屋で果たした忌まわしき再会。 彼の妹を捨てた男、猪野川が、不敵な笑みをうか…

戦慄

~あらすじ~ ランチの仕込みの際、タマネギをきらしていたことに気づいた、洋食屋店主のこうもり男。 意気揚々と街へ出るも、苦手な犬に吠えられて、昔のトラウマがよみがえる。 恐怖のかられて久々に全力疾走なんてしちゃったもんだから、息は上がるわ、口…

こうもり男のカフェ 3

~前回までのあらすじ~ 洋食屋のマスターであるこうもり男は、ランチの仕込みの最中で、タマネギをきらしていたことに気がつく。ひさびさに街を歩けば犬に突然ほえられてしまい…衝撃の急展開。 わん、わん!と、 「わ」に濁点をつけたような音で2度みじか…

こうもり男のカフェ2

はた、と気づき、こうもり男は普通っぽい服にきがえました。 マントと蝶ネクタイなんてしていっては、ライフ(最寄りのスーパー)で浮くにきまっている。 しましまの服を来た彼はまるで薄い胸に熱い情熱を秘めた青年のよう。 そういえば、街の地上を歩くのも…

こうもり男のカフェ

こうもり男は最近、きまぐれで洋食屋さんを開いています。 その前は熱帯魚ショップでした。 その前は名うての泥棒でしたが、 なんとなく日陰者めいた商売をするのが嫌になり、足を洗ったのです。 熱帯魚は最近の癒しブームに乗っ取ったのですが、 世話が意外…

フワフワの曲

しし座流星群が来るらしいから、ちょっと屋上行ってみてくるわ、 と、セーターをかむると、仕事仲間の鶴太が「しし座?」と首をかしげたので、 「あ、ちがった、オリオン座流星群だった。」 私は思い出した。背が高くてごつめな体格のイメージと裏腹に、鶴太…

彼岸花

きんぎょが、飼っているきんぎょがもう三年も生きているんですよ。 から始まり、きんぎょトークになりました。久々に、高校時代の先生をはさんでの飲み会の席です。 「不思議な事に入れる水槽にあわせて身体が成長するんだよ。家にあった大きな水槽に入れた…

七藝の青年

つい先日、洗濯ものを入れて畳んでいたときのこと。 暑くてからっと晴れていたので、もうぱりっぱりです。 お日さまの匂いを存分にすいこんだ衣服たちを適当な形に折っていると、ぽろりと、何かが落ちました。 思い出?…そうではありません。てんとう虫です…

映写犬

久しぶりに仲良しメンバーで旅行へ行こうという話になり、やってきたのは伊勢志摩。 顔をあわせたのはそれこそ10年ぶり。 それぞれの歳月を経てそれぞれの職についていた彼ら。顔ぶれは、歌人、ぬすっと、野球選手、霊媒師と まさにさまざまです。 最初はぎ…