うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

Happy Valentine

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 ♪坊や~、良い子だねんねしな~
 でおなじみの日本昔話。
 市原悦子演じるのは、病気のおっかあから、謎の美女、幼い子どもまで。「サザエさん」のアナゴくん役が、冒頭に登場するとおりすがりの紳士(サザエさんに道を尋ねたりする)を兼任しているのなんて比じゃないくらい、幅広く声優を担当していました。
 
 そのうちの一話で、一人の男が、自分がいかにうまく絵を描けるか、と自慢をする話がありました。
 お題は、「母親が子どもにごはんをたべさせているところ」。

 あっという間に描きあがった絵は、頭に三角きんをした母親が左手で茶碗を持ち、右手につかんだ箸で、わが子の口に米を入れてやっている情景。
 墨と筆のみで描かれたながら、着物の袖をまくった母親の腕も白くふくよかに、炊いたばかりの飯の匂いが漂ってきそうな見事さ。

 にもかかわらす「これはおかしい。」と、すかさずもう一人の男。
 「一体どこがおかしいと言うんだ。」
 そんなはずはない、と目を剥く絵描きに一言。
 
 「食べさせているときに、母親が口を閉じているはずはない。子どもにあ~んと口を開けさせるのに、自分も、あ~んと口をあくはずだ。」

 たしかに絵の中の母親は、きゅっと口を結んでいます。
 それを聞いて、絵描きはぐうの音も出なくなってしまう、という場面があったのですが、
 おさな心に海坊主は、
 いやいやこんなのただのいちゃもんじゃないか。
 と思ったわけですね。
 
 
 

 しかし自分はどうでしょうか。
 最近気がついたら、絵を描く時に、泣いている人を描くときは悲しい顔に。笑顔の人を描くときは自然に口の端があがっているのでございます。
 背中を丸めただらしない格好で、にたにたしながら絵を描く自分の姿を思い浮かべると、あやしくてしょうがありませんが、昔見たお話の内容をようやく理解して、目からうろこなのでした。