そんなことをするから、いざという時どこにやったかわからなくなるのよ。
おさななじみではあるが久々に会ったのに、まるでわかったような口をきかれてついカチンとなり、
関係ないだろ、と言った口調が予想よりぶっきらぼうになっていた。
しまった、と思ったが時すでに遅し、思い切り気分を害した彼女は早々に家へ帰ってしまった。
残された僕はなんだよ、と呟きながらティッシュを何枚も丸めてエイ、と壁にぶつけるという腹いせをした。
お互いに好意を持った時期が確かにあったのに、
つきあってもいないくせに訪れた倦怠期によって会わなくなった僕ら。
でも思い返してみれば、こんな風に子どもっぽい些細な感情の波が、距離を作った原因な気もする。
あら、江子ちゃん、もう帰っちゃったの?
そんな無駄使いをしていたせいかテッィシュはすぐになくなり、
何気なく捨ててしまったらしい。
メモ書きが必要となった時にテッィシュケースの姿はなく、ごみ箱をあさるも時すでに遅し。
朝に来た収集車によってあつめられ、焼かれてしまった後だったのだ。
ずぼらさが招いたふたつの暗い出来事を目の当たりにして自己嫌悪に陥った僕は、ティッシュを今までのようにじゃけんに扱うことをやめる決心をした。
手元にいつでもあるティッシュケースはメモには最適で、そこに控える癖は直しようがなかったから。
その日から「ティッシュペーパー」と正式な呼称で呼ぶようにして、
鼻をかむのにはハンケチを使った。
どうしても使うべく時には必ず一枚づつしか引き出さぬよう、重なっている多くの場合は注意深くはがしながら行った。
どこから広まったのか、テッィシュペーパを大事にする運動、はエコ団体に取り上げられ、
いつの間にか創始者にまつり挙げられ、
他の部分でもエコにつとめざるを得なくなった。
クールビズ、マイ箸の携帯、街の緑化・・・・などしているうちに変な情熱が燃えたってきたのは確かだったが、
ほんとうの原動力は違うところにあった。
江子。
あの日をさかいに本当に会えなくなってしまった女の子。
突然で久々の訪問の理由は、きっと留学のことを伝えるためだったのだ。
少し有名になってちょっとしたメディアで取り上げられるようになり、
雑誌記事のインタビューなどに答えながら、
遠く海外にいる彼女の目にいつか触れる日がくることを、僕は待っている。