うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

もしもアリスがとんでもなく汗っかきだったら

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 「アリス、人が本を読んであげている時に寝るものじゃないわよ。」
 「だってお姉さん、そのご本、挿絵がちっともないじゃないの。」

 昼下がりの木陰でお姉さんの朗読をききながら、その難しい内容に流れる脂汗をふいていると、なんと目の前を、懐中時計をぶら下げた白兎が横切ったのです。はじかれたように立ち上がり、ぴょんぴょん進む白兎を追いかけました。
 途端に汗がふきでてきて、ウェーブがかった金髪が顔や頭にべたりと張り付きます。前をゆく兎はしきりに遅れる、遅れる、とつぶやきながら、草むらの中に空いた穴に飛び込みました。負けじと飛び込むアリス、結構な勢いで落下するものですから、絶えず流れる汗の雫が上昇してゆきます。

地球の裏側にたどり着くのかしら云々、とか考えたいところですがアリスの頭の中はもう汗のことでいっぱいです。こんな汗みどろの女が必死の形相で追いかけてきたら兎さんはドン引きするに違いない、だの、近寄ってご挨拶しようにも汗臭いと思われるのではないか、だの。

そうこうするうちに底にたどり着いたようです。目の前にきのこがあったので、汗のことで冷静さえを失った彼女はそれがワライダケかも、などの警戒もせず口に放り込みました。
 すると、目の前のものがどんどん小さくなってゆく、と思いきやそうではなく、アリスの体が成長期の野球少年も比にならぬ程の勢いで大きくなっていたのです。
 どうしようどうしよう、もうあせるどころの騒ぎではありません。こんな大きい女、誰が嫁にもらってくれるの?ていうかそもそも人間としてNG?
 あせると文字通り汗が出るのです。
 その大きな体の大きな額から溢れる液体はもちろん物凄い量です。途端に部屋は水びたしになり、塩分も存分に含んで海と化してしまいました。


 (つづく)



なぜこんな話が浮かんだかって、それはうみ自身がとんでもなく汗かきだからなのです。でもこんな不思議の国のアリスも、人間味があってよいですよね。最近ずっと汗だくだからずっと髪がしめってぺったんこなので閉口しています。