うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

Croissant

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 人一倍、いいえ、猿一倍のバナナ好きを自負している、さるがいました。
 
 ある夜、それはおいしそうなバナナが夜空に浮かんでいるのを見て、たいそう驚きました。
 あまりにもおいしそうで、まるで光りかがやいているかのようです。
 
 仲間や、とりやムシたちから情報を集めた結果、
 大きさがとてつもなく巨大であること、
 「ひこうし」という職業になれば、バナナのある場所まで辿りつけることが判りました。
 
 もともとかしこかったさるは、一所懸命に訓練と勉強をつんで、とうとうロケットに乗ることができたのです。
 
 帰ってくると、大スターになっていました。
 外車も、美女も、権力も、手にはいらないものは何ひとつありません。
 
 それはそうと、行きついた先は美しいバナナではなく、乾いてボコボコした石のかたまりでした。
 代わりに今や、彼が望めばいつでも、銀の盆に積まれた高級なバナナが目の前に出されました。
 
 
 けれどもしばらくすると、
 以前ほどに美味しい、と感じることができなくなってしまったのです。
 そんな筈はない、たまたま甘くない一本にあたってしまったのだ。
 認めたくない一心で、がむしゃらに食べれば食べるほどに。
 
 
 仕方なく、おかかえのコックにチョココーティングとチョコスプレーで見た目も華やかにトッピングしてもらい、味に変化をつけました。
 
 偶然目にした若者が、その年の縁日に初めて「チョコバナナ」を売り出し、なかなかの評判をえました。