人一倍、いいえ、猿一倍のバナナ好きを自負している、さるがいました。
ある夜、それはおいしそうなバナナが夜空に浮かんでいるのを見て、たいそう驚きました。
あまりにもおいしそうで、まるで光りかがやいているかのようです。
仲間や、とりやムシたちから情報を集めた結果、
大きさがとてつもなく巨大であること、
「ひこうし」という職業になれば、バナナのある場所まで辿りつけることが判りました。
もともとかしこかったさるは、一所懸命に訓練と勉強をつんで、とうとうロケットに乗ることができたのです。
帰ってくると、大スターになっていました。
外車も、美女も、権力も、手にはいらないものは何ひとつありません。
それはそうと、行きついた先は美しいバナナではなく、乾いてボコボコした石のかたまりでした。
代わりに今や、彼が望めばいつでも、銀の盆に積まれた高級なバナナが目の前に出されました。
けれどもしばらくすると、
以前ほどに美味しい、と感じることができなくなってしまったのです。
そんな筈はない、たまたま甘くない一本にあたってしまったのだ。
認めたくない一心で、がむしゃらに食べれば食べるほどに。
仕方なく、おかかえのコックにチョココーティングとチョコスプレーで見た目も華やかにトッピングしてもらい、味に変化をつけました。
偶然目にした若者が、その年の縁日に初めて「チョコバナナ」を売り出し、なかなかの評判をえました。