うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

炒めてない海鮮炒め

                

村上龍料理小説集』という本を突然、もう一度読みたくなった。もともと古本屋で見つけたもので、読んだ後、面白いから、と、誰かにあげてしまったのだ。さまざまなシチュエーションで、主に女性と、料理を食べた時の記憶が綴られる短編集である。そりゃあこれだけの才能なら散々あそんだろうな、と、思わざるを得ないほど贅沢でセクシーな食事風景が並ぶ。聞いたこともないし今後もぜったいに口にしないであろう、そんなお料理も、空想の中であじわえる。もしかすると実際に食べるのよりも美味しいかもしれない。10ページ36篇の構成である。じぶんだったらどの食事の記憶を書こうかな、と、頭の引き出しを開けてみたら、山のように出てきた。シュレッダーするのに丸3日くらいかかりそうだ。美味しかった物、そうでない物、イマイチだったが口に出してしまうと現実になるので、お互い腹の中に感想をしまっておいたもの。味なんてどうでも良いくらい幸せな時間、味なんて忘れちゃったくらい酔っ払った時間、味覚を満足させることで愉快になるしかなかった相手、相手の顔がビールに見えてきてしまうくらい美味しい生ビールの1杯目、などなど。とても選びきれない。全くのフィクションを36個つくるのも難しい。適当な絵を描きながら、そういえば猫には睫毛がないな、と気付いた。