うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

ときには乱歩のように

イメージ 1

 きのうの、雨の降る前の夕刻。

 屋上に、すずめの死骸がある、との報告を受け、腹をくくって回収しに行きました。
 近所の公園に埋めるつもりでした。
 
 おそるおそる階段をあがり、びくびくドアを開けます。
 死体がある、という情報がある場合とない場合では、当たり前だがこうも違うのか、という緊張のし具合。
 
 思い切って見渡すも、それらしき姿は目にはいりません。くまなく四方に目を行き届かせても、ありません。やっきになって探してみたって、どこをどうしても無い物はないのです。
 
 これはおかしい。母の口調ではあきらかに死んでいる様子だった。 
 
 他の鳥か何かがついばんだにしては、跡形もなさすぎるし、(たつ鳥あとをにごさず、という言葉はあるが)
 丸ごとさらってゆきそうな、とんびなどはこのあたりで見かけたことはありません。
 
 
 まあ、きっと気絶していただけで実は生きていたのだろう。
 と、科学的根拠にもとづけば一番自然とみられる解答で自分をだましだまし、家の中に入りました。


 けれどもふと考えると、前にもこういったことがあったのです。
 
 前回は、ねずみでした。ガレージに大きなねずみの死骸がある!という報告を受けて見に行ったのに、
 やっぱりどこにもないのです。
 
 
 これはもしかすると、小動物たちの中でおどろおどろしい怪事件が起きていて、
 つぎつぎ死体が消える、という連続殺人の幕開けなのかもしれない…
 
 一体犯人はどういったトリックを使ったのか。

 …けれどもいまいち盛り上がりません。人間におきかえれば、モルグ街もびっくりの大事件なのに。これは、ねずみや小鳥というものの生死が、私たちの生活においてどれほど小さなことなのかを物語っていました。
 
 そうしてまた、人間社会で起きる事件や事故などのニュースを、同じように全くとるに足りないことだと思っている存在が居るのかもしれない、と、ふと考えもしたのでした。


 おしまい