江戸時代を舞台にしたゲームソフトの中に、虫売り、なるものが出ていたのを思い出し、
僕は虫を採集することにした。
それぐらいお金にこまっていたのだ。
夕闇があたりを包む時分から夜更けの間、虫取り網と虫かごを装着して夜な夜な歩きまわっていたのだが、蝉と同じで音がすれども正体はなく、
思うように成果はあがらぬばかりか職務質問までされてしまった。
結果、売る前に虫は弱ってしまい、不憫になってテイク&リリースを行った僕の得たものは、
無職という在り方に対する世間の異様に冷たい態度だった。
こうなればもう、悪に手を染めるしかない、と、
コンビニ強盗を企てた僕。いや、俺。
早朝のまだ暗いうちに、眠っている両親に小さくわかれと謝罪をつけて、
フルフェイスのヘルメットを装着して玄関を出る。
が、家の立地条件をすっかり忘れていた俺は、
朝四時過ぎにヘルメットで黒い鞄を片手にふらふらする、というどう見ても怪しい有様を警察に呼び止められ、 連行されて説教される羽目に陥った。
寝不足と自分へのふがいなさでいらいらした頭がそこでぷつんときれてしまったらしい。
頭が真っ白になり、気が付けば病院のベッドの上・・・
ではなく、
バラの花がちりばめられた室内、最高級のふかふかの羽毛でできたベッドの上、両手に美女をはべらして目が覚めたのだった。
しばらくあたりをきょろきょろ見回して途方に暮れていたら、ブロンドの美女が笑って話しかけてくる。
どうしたの、まるで今ここに降って湧いたみたいな顔よ。
そうだ、僕は学生の頃思いついた虫の販売が大当たりして、大金持ちになった青年実業家なのだった。
今、貧乏だったころの夢を見たんだ。
その頃はこんな生活こそ、夢の中でしか見られなかったよ。
美女たちが笑いさざめく。
自ら言っておきながらあまりにリアルすぎて、
実はこっちが夢なのではないかと心配になり、
確かめるためにほっぺたをつねろうとして、
やめた。
痛みを感じなかったら嫌だったから。
おわり
少し前に雷に直撃される夢を見ました。
二日後にすごい雷の天気だったので、正夢なのではないかとどきどきしてしまいました。