ある町に植木屋がおりました。
買ったコートが長過ぎたので、思い悩んだあげく仕立屋さんに
行くことにしました。
15センチくらい短くしてください、
お願いするとエプロン姿の男性店主はわかりました、
と、預かってくれました。
四日後、上がりました、との連絡がありふたたびお店へ。
しかし手渡されたコートは全く違うものです。
着るミラーボールとでもいうのか、きんぴかなのです。
金らんどんすの帯締めながら、花嫁御陵はなぜ泣くのじゃろ
という歌詞が頭に浮かんでくるのを振り払い、
真面目に訴えます。
これ、持ってきたやつと違うんどすけど。
そしたらちょっとだけ首を傾げたあとに、ぽん、と
手を打った店主がカウンターの下から取り出したのは別の包み。
「あなたが預けたのはこのGUCCIのコートですか。」
ロゴ入りの紙袋から取り出したそれは、
紛れもなくおしゃれで生地もしっかりしていて、
ちゃんとタグにもマークが。
そ、それです
咄嗟に口をついた嘘に多少の罪悪感を覚えながらも、
思ったより安く済んだ直し料を払ってウキウキ
品物を持って帰る植木屋の男。
コートは暖かく、男は冬じゅうあたたかく、
風邪も引かずに暮らしたということです。