うみつづき、陸つづき -押海裕美ブログ-

思いついたことが、消えないように絵や文にしました。

アイロニカルバタフライ

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 一秒が永遠のように感じられた、永遠のような長い口づけ・・・
 小説で読んだ永遠に関する比喩は思い浮かぶのだが、その単語を説明する方法がわからない。太平洋を横断すること?・・いやそれは遠泳だわ。

 余程、目を白黒させていたのだろう。
 私の顔をじっと見つめていたがやがてふふっと笑い、人魚は表情を緩めた。
 「死んだこともない人間が死にそうだとか死ぬほど、とか言うのもそうだけれど、あらゆる言葉がホイホイと使われすぎているのよね、この世界では。」
 月が、音がしそうなくらいに輝いている。
 自ら光を発する天体ではない筈なのに、確かにきらきらと光を放っていた。
 遠くに見える島が、背景の空の藍色を引き立たせるかのように黒い影となって佇んでいる。こんなにも世界は綺麗なのに、人魚にとってはそうではないらしい。

 「たとえば何か大切なものを失って、それを永遠に手に入れることができなくなったとき。なんだか初めの頃は実感が湧かなくて、年月が経って思い出して時々悲しくなったりして。でも、ああ本当にもう手にすることができないのか、とやっとわかりかけてきた頃にはもう悲しむことすらできなくなっている。」
 淡々とした人魚のつぶやきは、シャープがたくさんかかった短調の音楽のように、静かな悲しみで胸を痛めつけてきた。
 「あなたみたいなネンネにもわかりやすいように言ったら、だいたいこんな感じの意味よ。」
 いたずらっぽい感じに仕上げたその微笑は、感傷に沈みかけた自らをすくいあげるように明るく見せた作り物のようだった。
 「どうでもいいけどネンネちゃん、目が白目を剥いていてよ。」
 おっとっといけない、文字どおり白黒させていた目が、白目の状態で止っていたようだ。

 (まだつづく)


 なんだか引っ込みがつかなくなってまいりました。内容もちょっと真剣になるといろんな作家の真似ごとすらできていない自己満な稚拙な文章になってしまってこりゃあ読むのがしんどいですな。

 大崎善生さん著書の『パイロットフィッシュ』という小説の中で、主人公が「永遠」の定義づけを彼女にして聞かせるシーンがあります。
 「見渡す限りのかた~い岩の大地で、千年に一度降りてくる天女が、自らの纏ったうす~い羽織ものでさっとひと刷けして天へ帰る。そうしてその岩が全部なくなるまでにかかる時間云々。」
 以上は要約。もっと素敵な文章で表現されています。
 ああこれは面白いなぁ、普段何気なく使っている言葉を自分の言葉で説明する。いかに美しくできるか、それとも面白くできるかを競い合うゲーム。
 飲み会でするとよいかもしれんなあ。
 と、思ったはいいもののまだ一度も試していません。