これ言いたいだけ
「もしぼく」
なんて略さずに、
ちゃんと最後まで口にしたいタイトルです。
むしろ、このロマンチックで酒好きにはたまらんフレーズを口にしたいがために、
「きのう、『もし、ぼくらの言葉がウイスキーであったなら』っていう本を読んだらね…」
っていう振りをしちゃいそうになりますね。
そのぐらい、タイトルに惹かれて買った本です。
著者がまったく聞いたことのないような人でも、今にもつぶれそうな古本屋が屋外で叩き売っている
書籍の中にまぎれていて、そこらにアンダーラインがひかれていたり、よくわからない褐色のしみがあっ たり、カバーが失われている裸の姿だったり、香ばしいを通り越してツンとするほど匂いが酸化していたりしても・・・
ひと目みた瞬間にこの本を手にとり、レジに持っていったでしょう。
って書いてきたわりに、
はじめて見たときは買わなかったのですけどね。
著者が有名すぎて気後れしていたためか、後ろ髪をひっぱられながらも手に入れなかったことを、たまにせつなく思い返しながらはや3年あまり。
見つけたのです、ふたたび。行きつけの本屋さんで。
まあ、大型書店を探したり、アマゾンで買ったりしたらすぐに手に入ったのですけれどもね。
(そこは、子どもの頃から大好きなミュージシャンのファンクラブに入らない気持ちとかに似ている。)
おもに古本しか買わないのに、「もし、ぼくらの言葉がウイスキーであったなら」
つやつや綺麗な琥珀色の表紙と、
ぴかぴか磨かれたグラスに注がれた、自分のためのウイスキーに鼻をちかづけるような初々しい気持ち
が同時に得られて、
新刊で購入するのがふさわしい気がして、満足でした。
●「もし、僕らのことばがウイスキーであったなら」/村上春樹
(新潮文庫)